深川祐次 株式会社香蘭社 代表取締役社長~有田焼の新たな可能性への挑戦

会社

有田焼と株式会社香蘭社の歴史

「有田焼」という焼物の名を聞いたことがない人はいないと思います。初めて日本で磁器が焼かれたのは1616年と伝えられています。江戸時代初期のことでした。良質な土がとれる有田の陶磁器は見た目にも美しく、藩に擁護されて産業として発展し続けてきました。
株式会社香蘭社の前身の会社は1689年(元禄2年)に創業しています。その後、明治維新に伴う混乱で販路を失うというピンチに陥りますが、1879年合本組織香蘭社として新たに会社を設立して何とか生き延びることに成功しました。パリで開かれた万国博覧会に出品するという試みが成功を来たし、合本組織香蘭社が手掛けた有田焼の精巧な美しさは国内はもとより、海外の好事家たちの注目の的となったのです。版図を世界に拡大し、有田焼を広めること100年以上。
今や株式会社香蘭社は国内4つの工場と流通センター、銀座を始めとする本格的なショールームを持つようになりました。全国の百貨店やアウトレットショップでの販売も順調です。

深川栄左ヱ門の精神

株式会社香蘭社は日用品を作る窯業であると同時に、伝統工芸である有田焼を担っている会社でもあります。美術品からインテリア、日常使いの食器、あるいは進物用まで、価格帯も様々。その中でも製造・販売においては一貫して大切にしている言葉があるそうです。
「製品の品質、形状に妥協しないこと。手に取りやすい価格にすること、有田焼の名誉を大切にすること」という創業者・深川栄左ヱ門の言葉です。世界で多くの人に使ってもらい、また愛される製品を作り出すために大切な理想として、この言葉を株式会社香蘭社は企業理念としています。
その深川栄左ヱ門の名を冠した「栄左ヱ門」というブランドがあります。栄左ヱ門が生きた明治初期という時代にこだわった優美な絵付けで彩った最高峰ブランドです。ラインナップは花瓶や壺など。繊細な手書き絵付けを施された有田焼万華鏡という珍しい商品もあります。これらはどれも高価なものですが、有田焼の最高峰である輝きにあふれた商品で一見の価値アリです。

「碍子」という異分野

日本が誇る伝統業である有田焼ですが、昨今は安い外国の食器に席捲されて売り上げを減らす時期もありました。産業の危機です。深川祐次社長率いる株式会社香蘭社は、老舗の伝統を大切にしながらも、有田焼の新たな可能性への挑戦を続けました。
企業として安定経営を行う為には、全国で常に必要とされるものを作り出すことが一番です。そこで、深川祐次社長は意外なものに目をつけました。碍子です。電柱に付いているものであり、電線を支柱に絶縁固定する陶磁器の器具のことです。電柱の地中化が促進されてはいますが、まだまだ日本中には多くの電柱が建っています。電力の供給に欠かせない碍子を有田焼で造り出したのです。これは思わぬ副産物を生み出しました。全国の碍子ファンからの要望で、観賞用の碍子の製造販売という新たな分野に繋がったのです。
美術館で、食卓で、あるいは道路に建つ電柱で、私達はいつでも株式会社香蘭社の有田焼を見ることができるのです。

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