不動産をうまく活用し、ユニークな試みで新たな資産価値を生み出し、資産運用を行っていく事業を展開している株式会社レーサム。1992年に株式会社レーサムリサーチが立ち上がり、そこから株式公開を行ってから現在のレーサムに商号が変わります。この商号が変わる時期にレーサムは本社移転を行っています。現在取締役会長を務め、当時は代表取締役社長だっや田中剛さんは、本社移転に対して相当な思いを抱いていました。田中剛さんはどんな思いを抱いていたのでしょうか。
見た目に豪華だが
株式会社レーサムが本社を置く霞が関コモンゲートは虎ノ門駅と直結するオフィスビルで、そこの35階と36階に入居しています。
全ての社員が利用するオフィスゲートが真ん中にあり、そこから左右にウイングを広げ、仕事を行うエリアが続きます。会社の中にバーラウンジがあり、そこでくつろぐこともできるなど、株式会社レーサムはユニークなオフィスの作りをしています。
一方、内装を見てみると、とても高い椅子に社員たちが座っており、多くの人が利用するコラボレーションコーナーの家具にもお金がかかっており、内装にかなりお金をかけていることがわかります。
内装を贅沢にしているのではないかと誰もが思うでしょう。しかし、当時代表取締役社長だった田中剛さんはこの考えを否定し、このように語っています。
「オフィスに無駄な金はかけないというのが私のポリシーです。その考え方は、今でも全く変わっていません」
社員の椅子は誰でもわかる非常に高い椅子であり、家具は決して既製品ではないにもかかわらず、オフィスに無駄なお金はかけないとはどういうことか。ここには株式会社レーサムの歴史が大きく関係していると言います。
元々は最低限のスペースだけでいいと思っていた
株式会社レーサムは現在に至るまで、ユニークな形で資産価値を高め、資産運用を行ってきました。例えば、仮想通貨で家賃の支払いができるのもその1つです。
今まで誰もやらなかったことをレーサムはやる、それを1992年から今に至るまで続けてきたのです。とはいえ、ユニークなことをやっているとはいうものの、社員を含め、田中剛さんはいたってマジメに取り組んできただけのことです。
こうした方針にで経営していたからか、田中剛さんがオフィスに対して抱いていた考えは、最低限のスペースさえあればいいというものでした。
1992年に会社を立ち上げた際、オフィスを確保できただけでも十分ありがたく、贅沢をしないことをポリシーとしていた田中剛さん。
この後、レーサムは事業を大きくし、それによって社員も増えていきます。当然オフィスは手狭になっていき、どんどん大きくしていきました。
ただ、これはオフィスを広くしなければ仕事にならないからであり、決して贅沢の範疇ではありません。そんな田中剛さんがなぜ考えを改めるに至ったのでしょうか。
話をするスペースが欲しかった
株式会社レーサムの取り組みは高く評価されるとともに、元々あった不動産を新たな付加価値を加えることで、今までにない資産価値に高めることができたことは非常に大きく、海外からも注目されるほどでした。そのため、外国人がレーサムのオフィスを訪問するなど、活発な動きにつながっていきます。
しかし、ここで問題が生じます。レーサムのオフィスは必要最低限の広さしか確保されておらず、投資家を招いたとして将来的な話をゆったりと話す環境がなかったのです。これはまずい、ゆとりのある空間を確保しなければならないと田中剛さんは考えるようになります。
同時に、レーサムをより大きく成長させ、それを内外に示す必要性がありました。レーサムはバージョンアップしている、それを端的に示すのは何かと考えた場合、オフィス移転であると田中剛さんは考え、プロジェクトが立ち上がります。
オフィスから意識改革を!
これまで必要最低限のスペースさえあればそれでいいと思っていた田中剛さん。しかし、その考えを一変させないといけないと気づき、大きな一手を放ちます。それはコストに対する考え方を大きく転換し、予算に関する口出しを一切やめることにしたことです。
オフィス移転をきっかけにレーサムをよりバージョンアップさせる、アップデートを行っていかなければならないのに、予算を理由にやめさせるのはいかがなものかと考えるようになったのです。
そこで陣頭指揮を執るようになったのが現在代表取締役社長を務める小町剛さんです。尾松剛さんは現在の三菱UFJ銀行で10年ほど働き、33歳の時にレーサムに入り、社長室長を経て、当時常務取締役を務めていました。
小町剛さんは、レーサムの文化を当然知っている一方、新しいものをどんどん打ち出していくのであれば、情報に敏感であるべきだという考えを持っていました。そのためのオフィス移転は大賛成、後はどのような方向性にしていくか、小町剛さんは考えるようになります。
ユニークな机の形
株式会社レーサムのオフィスは、当初フリーアドレスも考えられましたが、これを見送る一方、個人のロッカーを置いてそこに収納できるようにし、自分の席に収納をつけないようにしています。私物はロッカーに置き、仕事をする机に収納スペースをつけないことにしたことで、スペースの有効活用につながっています。
実際に導入された机はL字型を少し崩したようなものになっており、3人1組で1つの島が出来上がるような形になっています。10センチ分机を短くすることにより、よりゆったりとした環境を作り出すことができました。
収納をなくすことは、紙を大幅になくすことを意味しており、オフィス移転に伴う社内改革が徹底して行われたそうです。オフィス移転で働き方を一変させる、田中剛さんの考えがそこにありました。
他にもあるレーサムの工夫
新たなオフィスを作ることで働き方を一変させたいと願った田中剛さん。そのために社員同士がコミュニケーションをとれる、より気づきを得られる環境にしたいというコンセプトがありました。オフィスゲートを作って入り口を集中させることだけでなく。このオフィスゲートに様々な機能を集中させようと考えます。
レーサムの社長室はオフィスゲートの周辺にあり、事業を展開するトップの席もオフィスゲートの近くにあります。これまでの常識では部下を束ねるように上司の席があったところ、これが上司と部下で完全に場所を分けられたのです。これにより、コミュニケーションは活発になったといいます。
また会社の動き、経営者たちの態度など様々なものが見えるようになったことで、社員は自分で考えるようになり、経営に対しても決して他人事にはならなくなっていったのです。調度品の豪華さ、バーカウンターなどとてもオフィスとは思えない環境を作り上げていったレーサム。オフィスは必要最低限でいいと思っていた田中剛さんは、オフィス作りの楽しさに目覚めていったのです。
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