御所の近くに創業・美術系出版社
京都市上京区。御所の近くという場所に、マリア書房は居を構えています。1925年、大正時代に創業した美術系の出版社です。株式会社マリア書房として設立されたのは、1958年のこと。
室町時代からの老舗が立ち並ぶ京の町では比較的歴史の浅い会社ではありますが、美術系専門の出版社としては、国内では老舗として存在感を放っています。
更に株式会社マリア書房は美術書の出版のみならず、京都の町の中心という立地を活かして、展覧会を企画するという事業も行います。展覧会企画を通じて、新進の作家を多くの人に紹介する『ギャラリー高野』という場を設けており、文化交流の中心たる存在となり得ています。
そんな株式会社マリア書房を率いる社長の名は、高野明子。1972年、京都市生まれ。京都大学理学部出身の才媛です。
100年続く老舗出版社の試み
歴史ある京都には寺社仏閣や美術館、博物館、大学の数も多く、知識の町として有名です。
当然ながら書店、そして小さな出版社も数多く存在しています。そんな中で、株式会社マリア書房が大正時代から100年近く存続できたのは、美術に特化した事業が評価されてのことでした。
伝統的な日本画の大御所から新進の若手まで、日本画を描く画家を1人1ページというスペースを使って図とプロフィール、画家からのメッセージを収録した『日本画年鑑』を毎年刊行しています。全国の画廊についてや、市場での参考価格などがつぶさに書かれたもので、日本画の現在を網羅するものとして画家はもちろん、愛好家や絵画教室などで重宝されているそうです。
同様に洋画家に特化した『現代の洋画』も継続して刊行しており、これらへの掲載を目標に活動する作家も数多くいるのです。
他にもアート系の作品を数多く出版しており、全国の書店や、最近ではオンラインでも購入できるそうです。また、近頃はSNSを活用して、とりわけ若い人たちに向けての情報発信にも力を入れています。
まとめ~出版の裾野を広げて
高野明子社長は以前から行っている出版業を、より多くの人に利用してもらおうと自費出版についても積極的にサポートを行っています。『ギャラリー高野』で展覧会を行った素人作家が、株式会社マリア書房を通じて念願の作品集を出版することもあるのだとか。出来上がった本を手にした作家の笑顔を見ることが、高野明子社長が何より喜びを感じる瞬間といいます。
これまで誰にも知られていなかった芸術を、ギャラリーでの展覧会や出版によって世に広めていくことが、古くから続く出版社としての使命なのだと高野明子社長は語ります。出版を通じて「人の輪」が繋がっていくこと、それが文化を継承していくことなのだと。
古くからの伝統色豊かなこの地で、新しい作家の息吹を感じる仕事を続ける──それが高野明子社長の生き方なのです。
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