吉岡幸治 株式会社文苑堂書店 代表取締役社長~「ドラえもん」の作者が愛した書店の生き残り戦術

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「町の本屋さん」の成長

町の本屋さんの衰退が危ぶまれていますが、定期的に本屋さんに通うという人はまだまだ多いのではないでしょうか。好きなコミックスの新刊や、気に入っている作家の小説、面白そうな特集を組んだ雑誌、はたまた参考書や実用書など。本は私たちの生活になくてはならない大切な存在です。
富山県が誇る文苑堂。株式会社文苑堂書店が運営し、富山、石川、愛知に複数店舗を構える大型書店です。1946年、富山県高岡市で「高岡書店」を出店したのがその歴史の始まりでした。1947年に文苑堂と改称し、以来「町の本屋さん」として地域の人々の憩いの場を提供してきました。今や書籍・雑誌や文具を販売する「文苑堂書店」、玩具を販売を手掛ける「おもちゃのバンビ」など業態も多様化し、総社員数120名、そして年商94億円を叩き出す大手企業に成長しています。ホームページに店舗の動画が掲載されていますが、広大な売り場面積に圧倒されることでしょう。

生き残りをかけて

本屋とは「知性」「教養」「感動」の場であると、社長の吉岡幸治は位置づけています。ここで提供するのは本だけではありません。雑貨や玩具などのエンターテイメントコンテンツを手掛けることで地域のお客様に娯楽と便利さ、そしてその先にある豊かな充実した生活をサポートするのが役目であると捉えています。
冒頭に触れましたが経営不振で店をたたむ「町の本屋さん」が増えてきたのは事実です。電子書籍をはじめとしたデジタルコンテンツの普及など原因は多く考えられます。これまでのように地域の人たちだけを対象とした細々とした経営では生き残りは危ぶまれると判断した経営陣は、積極的に異業種と提携しました。
レンタルCD、DVDのTSUTAYA、玩具のおもちゃのバンビ、雑貨販売のB&B、更に本屋にとってはライバルでもある中古本買取・販売のブックマーケット、更にはゴルフ用品買取のゴルフパートナーや教科書や教材、図書館本など各種出版物の卸まで、あらゆる業界と手を組むことにしたのです。ドトールコーヒーと組んでカフェの運営も手掛けます。
結果的に売り上げ増加だけでなく本屋に訪れる人の間口を広げることに成功し、文苑堂書店は地域文化の向上にも寄与する存在となったのです。

「ドラえもん」の作者が愛した書店

「文苑堂」という本屋さんの名前に「アレッ」と気付いた人もいるかもしれません。そう、国民的漫画である「ドラえもん」の作者である藤子・F・不二雄と、藤子不二雄Aの2人が学生の頃に通った書店がここ、文苑堂なのです。2人とも高岡市出身であり、漫画を愛する少年でした。文苑堂には手塚漫画を買いに走ったといいます。この書店で漫画を買って読んで育った2人が後に、今尚誰からも愛される「ドラえもん」などの名作漫画を作り出したと思うと、感慨深いものを感じますね。
吉岡幸治はこの伝統を大切にしながら、文苑堂書店を北陸全体に展開することを目標に掲げています。今後もますます大きく広がって、北陸の「知」を支えることになるでしょう。

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