低金利時代からインフレ・高金利時代へ、世界各国で突き進む中、ついに日本でもじわじわとその波に乗っかろうとしている状況です。そんな中、プライベートバンクを活用して資産防衛に動く富裕層も出てきています。
日本ではあまり浸透していないプライベートバンクですが、この牙城に挑むのが外資系のLGT銀行。なぜヨーロッパのプライベートバンクが日本に参入するのか、その理由などを探っていきます。
- そもそもプライベートバンクとは何か
- プライベートバンクの歴史
- 財産を守ることはLGT銀行も同じ
- プライベートバンクを初めて利用するとどうなる?
- プライベートバンクとプライベートバンキングには違いがある
- プライベートバンクと同じ意味合いで使われるウェルスマネジメント
- 古き良きプライベートバンクのテイストの方がいい理由
- 日本に古き良きプライベートバンクは存在しない?
- プライベートバンクはどのように稼ぐ?
- 普通の銀行と似ているようで違うところ
- LGT銀行が日本に進出する理由
- LGT銀行とはどのような銀行なのか
- LGT銀行のベースとなるリヒテンシュタイン
- LGT銀行が挑む日本のプライベートバンクの牙城
- LGT銀行が日本で勝負し、勝機はあるのか
- 長期的でサステナブルな投資とは何か
- LGT銀行は運用という点で実績アリ!
- 富裕層の資産管理を見直すべき理由
- 日本で狙うべき富裕層は経営者以外に?
- LGT銀行が狙う顧客とは
- LGT銀行の強みとは
- 目先の利益を追わないLGT銀行
- LGT銀行が大切にするインパクト投資
- LGT銀行が行ったインパクト投資の実例
- LGT銀行は年々成長を遂げている
- LGTが掘り起こしたいタンス預金や普通預金
- インフレが様々な悪影響をもたらす
- まとめ
そもそもプライベートバンクとは何か

ヨーロッパのプライベートバンクであるLGT銀行が日本に進出しましたが、そもそもプライベートバンクとはどのようなものなのか、プライベートバンクについて様々な角度から解説を行います。
富裕層向けの銀行
プライベートバンクは、端的に説明すると、富裕層を対象にした銀行です。対象となる富裕層は様々で、金融資産数億円から受け付けるプライベートバンクもあれば、LGT銀行のように10億円以上の資産を持たないと利用できないプライベートバンクもあります。
プライベートバンクでは巨万の富を築き上げた富裕層を対象に、資産運用を行うほか、富裕層が持つ資産管理なども行います。金融資産と先ほど限定しましたが、不動産、保険、美術品なども該当します。幅広く資産を運用し、管理する、それがプライベートバンクです。
プライベートバンクの歴史

今では当たり前のようになっているプライベートバンクですが、プライベートバンクの考え方は主にスイスやLGT銀行のホームグランドであるリヒテンシュタインなどを中心に活動しています。このため、プライベートバンクの歴史はスイスやリヒテンシュタインの歴史と通じるものがあります。
全ては財産を守るために

プライベートバンクの歴史は、プライベートバンクのオーナーである名家の財産を守る歴史でもあります。そもそもプライベートバンクにも流派があり、「ジュネーブ系」と「チューリッヒ系」の2つがあり、それぞれで発展を遂げてきました。
例えば、ジュネーブ系の場合は実に500年以上歴史をさかのぼらないといけません。この当時は各地でトラブルが勃発しており、その中に宗教への弾圧がありました。宗教への弾圧があると、まるで強盗かのように扱われ、着の身着のままで追い出されるように外に出ないといけません。そんな時、今まで築き上げた財産を何とか守り抜きたいと宗教への弾圧で非難された人たちが銀行を立ち上げたのがルーツとなっています。
チューリッヒ系の場合
一方で、チューリッヒ系の場合はまた別のところに源流がありました。スイスを思い浮かべる際、戦争を全くしない国、永世中立国のイメージが根強くあります。しかし、建国当初から永世中立国だったわけではありません。当初は戦争を行い、多くの兵士を抱えていました。そして、兵士を送り込むことも行っており、その際に兵士は対価をもらいます。この対価を守り抜きたいということで、プライベートバンクが立ち上がったとされています。
財産を守ることはLGT銀行も同じ

スイスにおける流派の違いはあったものの、最終的に行き着く先、思っていることは実はさほど変わりません。これはリヒテンシュタインのLGT銀行でも実は同じで、よりLGT銀行の方が切実です。
紙切れになってしまった悪夢

リヒテンシュタインにあるLGT銀行は、リヒテンシュタイン侯爵家の財産を預かってそれを運用してきました。現在リヒテンシュタインではドイツ語が公用語になっていますが、これは過去にドイツと連携していたからです。
そのドイツは第一次世界大戦で大惨敗を喫し、最終的にドイツマルクが大暴落し、俗にいうハイパーインフレがスタートします。ハイパーインフレになってしまうともはや手をつけることができず、その価値はどんどん暴落していきます。
最終的にLGT銀行が保有していた財産は紙切れ同然になってしまいます。これを受け、リヒテンシュタイン侯爵家が救済に乗り出し、リヒテンシュタイン侯爵家の財産を預かる形で再建に乗り出しました。この時の強烈な体験、もう二度と同じ目に遭いたくないという気持ちが、現代のトレンドになっている投資を先取りした形でプライベートバンクの運用が行われることになっていきます。
プライベートバンクを初めて利用するとどうなる?

実際にプライベートバンクを初めて利用することになる場合、どのような流れになっていくのか、とても気になるところです。プライベートバンクのあるオフィスに足を運ぶと、責任者がやってきます。この責任者は、プライベートバンクの成り立ちやプライベートバンクのスタイルなどを説明し、あとは質疑応答の時間です。
プライベートバンクは執事的な役割を持つ
結局のところ、プライベートバンクは多くの富裕層にとっての執事、コンシェルジュ的な存在になってくれます。そのため、プライベートバンクを利用する富裕層の方がなぜプライベートバンクを利用するのか、どのような方向性を目指しているのかを知る必要があるのです。
この質疑応答は1時間を超えることもあり、細かな勘違いがないよう、できる限りのヒアリングが展開されます。プライベートバンク側にも理念があり、富裕層の側にも考え方があります。互いの考え方、価値観を擦り合わせて頼りにできる相手かどうかを探るためにも、長い時間ヒアリングを行います。
これが一般庶民を相手にした商売の場合、何かと金融商品をゴリ押ししようとしますが、これでは富裕層は動こうとしません。プライベートバンクは金融資産を取り扱う専用の執事のような存在なので、あれやこれやと自分の良さ、メリットを語る人を執事にしたいだろうかという話になります。
プライベートバンクとプライベートバンキングには違いがある

日本人は外国語の違いをそこまで気にしないですが、例えばプライベートバンクとプライベートバンキングは同じようなものだと思う人が多いでしょう。しかし、世界の富裕層はこの2つが全く違うものであると認識しています。日本ではプライベートバンクそのものの認識度が低いため、何が違うの?と不思議に思う人が多いと思われます。
世界の富裕層が考える「プライベートバンク」
世界の富裕層が考える「プライベートバンク」は、規模がそこまで大きくはない状況で、プライベートバンクを立ち上げた創業者たちが経営するようなものを指します。資産運用や資産管理中心なので、例えば、どこかへ貸し付けを行うなど普段から利用するような銀行的なものは扱われていません。
まさに文字通りのプライベートバンクであり、経営者たちの資産を守るためだけの銀行と考えていいでしょう。日本では「資産管理会社」が、創業者の株式などを保有して管理していますが、意味合いとしては「資産管理会社」に近いものがあります。こうしたスタイルが本来のプライベートバンクですが、これだけ金融市場が発達していくと「古いスタイル」という扱いになりがちです。
世界の富裕層が考える「プライベートバンキング」
対して「プライベートバンキング」は、金融資産が一定以上の富裕層に対して提供していくサービスです。日本で活動を行うLGT銀行もここに入ります。LGT銀行の場合、リヒテンシュタイン侯爵家の資産を多く預かっているのでプライベートバンクの意味合いもありますが、プライベートバンキングのフィールドでも活動しているということです。
はっきり言ってしまえば、プライベートバンクもプライベートバンキングもそこまで大きな違いはありません。ただ昔ながらの、本来の意味合いのプライベートバンクの場合、あえて「プライベートバンキング」を名乗る意味がないため、結果的にそれぞれが分けられている格好です。
プライベートバンクと同じ意味合いで使われるウェルスマネジメント

LGT銀行が日本に参入する際、LGT銀行として参入したわけではなく、「LGTウェルスマネジメント信託株式会社」として参入しています。この「ウェルスマネジメント」というのは何かですが、プライベートバンクとほとんど同じ意味合いの言葉です。
ウェルスマネジメントの発祥はイギリス
ウェルスマネジメントという考え方が始まったのはかなり古く、14世紀の頃まで遡ります。当時イギリスでは、軍隊として遠くに遠征を行う際、領土を守るなどの目的で信託制度があり、そこからスタートしたという話があります。
プライベートバンカーのような存在もウェルスマネジメントにはあり、このウェルスマネジメントが職業となったのは1800年代の後半とされています。貴族相手に財産を預かり、相続の際に代理人を務めるような役回りになるなど、金融資産を預かって運用、もしくはアドバイスをするだけにとどまらず、財産管理など、業務が多岐にわたります。
日本のプライベートバンクも税務対策などに力を入れており、日本のプライベートバンクはイギリスなどのウェルスマネジメント的な役割に偏っているのかもしれません。
古き良きプライベートバンクのテイストの方がいい理由

プライベートバンクは規模も小さく、創業者たちの資産をできるだけ守っていこうという意味合いが強いため、無駄なことをしようとしません。これはLGT銀行における方針にも洗われています。なぜ古き良きプライベートバンクのテイストがいいのか、まだまだ理由があります。
実は顧客ファーストである
昔ながらのプライベートバンクは顧客ファーストで動き、顧客の事を第一に考えます。一般的な銀行は顧客ファーストとは言い難く、自分たちの利益を優先して考えがちですが、プライベートバンクの場合は基本的に自分たちの資産を守ることが大前提となるため、自然と顧客ファーストの視点を持つことになります。
こうした姿勢は金融市場が成長を遂げたり、様々な金融商品が出てきたりしても変化することはありません。サブプライムローンに端を発したリーマンショックも結局のところは顧客ファーストではなく利益最優先の姿勢が大きく影響した形です。時代が変わっても顧客ファーストを崩さないところが古き良きプライベートバンクのいいところなのです。
無理せず運用ができている

昔からあるプライベートバンクは着実な実績を出しており、無理をしなくても特段問題がありません。無理をして無茶な投資に挑む必要が一切ないため、ローリスクでローリターンに近いような運用でも十分です。既に大きな資産を抱えており、ローリターンに終わったとしても、それだけ多くの利益が出ます。
無茶な投資で失敗するケースはプライベートバンキングに限らず、様々なところで起きています。無茶をする状況はその時点である程度負けている状態であり、大勝負に出なければ取り返しのつかないところに来ているのです。プライベートバンキングは手数料が収益につながりますが、無理なノルマを示して無理やり右から左、左から右に動かして手数料を得ようとするところもあるでしょう。
昔からあるプライベートバンクはベースが確立されているので、普通に活動を行っていく中で利益を確保していくことができます。そのあたりも古き良きプライベートバンクのいいところなのです。
日本に古き良きプライベートバンクは存在しない?

LGT銀行が2021年に参入して話題となりましたが、実はこれまでも多くの外資系が挑み、あまり成功を残せていません。これは日本のプライベートバンクがうまくいっているというのが大きいですが、本来あるべきである古き良きプライベートバンクは数少ないと考える人もいます。
商業銀行の延長線上
古き良きプライベートバンクは、日本における「資産管理会社」のようなもので、日本のプライベートバンクを求めるなら資産管理会社のようなものを立ち上げるのがいいですが、なかなかその手のものを立ち上げても仕方ない場合にプライベートバンクを活用します。
しかし、日本にあるプライベートバンクは商業銀行の延長線上のようなケースが目立っており、本当に顧客目線に立っているのだろうかと疑わしいところもあります。顧客の視点に立って様々なアドバイスをしてほしいのに、実際は営業ノルマのためにあの手この手で誘導しようとする姿勢が垣間見えるため、世界のプライベートバンクとは色が違ってくるのです。
歴史的低金利が利益に走らせる

2022年12月になって日銀は実質的な利上げを発表したことで、円相場は一気に円高に振れるなど、1ドル150円の狂乱はようやく落ち着きを見せています。これまでは0.25%がマックスだったところ、0.5%までの上昇を認めており、0.5%まで行けば今までの歴史的低金利、歴史的金融緩和は終わりの一歩となるはずです。
この歴史的低金利こそが、利益追求に走らせていると考えられます。盛んに個人に投資を煽り、多くの国民に日本株を買ってもらうような動きを見せ、その流れに多くの金融機関が乗ろうとしています。この延長線上にプライベートバンクがあるとすれば、とても古き良きプライベートバンクとは言い難い状況になります。
資産を守るために始まったプライベートバンクの趣旨を考えると明らかに逸脱していることは言うまでもありません。
プライベートバンクはどのように稼ぐ?

日本のプライベートバンクが利益を追い求めて様々な動きを見せていることは先ほどもご紹介しましたが、では、実際にどのようにプライベートバンクは利益を出しているのか、気になる人も多いはずです。
手数料収入が中心
プライベートバンクの収入は基本的に手数料収入が中心となります。プライベートバンクではアドバイスを送るのが業務の中心であり、そのサービスを行っていく中で、アドバイス料のようなものをもらいます。
また、プライベートバンクでは多くの資産を預かってもらえますが、預かった資産に応じて手数料がかかることがあるほか、事務手数料なども生じるなど、何かと預けている中で手数料が生じ、その都度支払っていくような形です。「プライベートバンク」という名前こそついていますが、投資を助言する会社のようなもので、その点でもプライベートバンクそのもののイメージとは違っているかもしれません。
普通の銀行と似ているようで違うところ
普通の銀行とプライベートバンクでは似ているところも結構ありますが、違う部分も多々あります。どのようなところに違いがあるものなのでしょうか。

普通の銀行は「既製品」である
普通の銀行でもプライベートバンクでも、金融商品を提示し、投資をおすすめします。そのおすすめする「金融商品」に大きな違いがあるのです。普通の銀行の場合は多くの人が既に購入、もしくは購入を検討している「既製品」の金融商品であるのに対し、プライベートバンクでは富裕層のみをターゲットにしたオリジナルの金融商品となっています。
既に多くの人が購入している「既製品」の金融商品の場合、市場にあるものを集めてそれをベースに開発したものですが、今ある既存のものを組み合わせるからか、安定的な利益か、ちょっとしたマイナスぐらいに落ち着きやすく、今から大勝負をかけるには少し保守的で、守りに入っている感じすらあります。
その点、プライベートバンクは言ってしまえば富裕層のコンシェルジュ的な存在なので、どんな金融商品がいいのかをリサーチし、それにちなんだものを提示してくれます。とてもユニークな商品が多い分、魅力を感じさせるのがポイントです。
プライベートバンクはマンツーマンが長い

普通の銀行は多くの行員がサラリーマン的に働き、サラリーマンのごとく、様々な勤務地で働くことになります。そのため、顧客を確保しても異動を余儀なくされた場合、引き継ぎを行うため、1人1人の関係性がそこまで深くならない傾向に。
もちろん真っ当な理由もあり、あまりにも長年一緒にやり続けると関係性がおかしくなり、時に犯罪につながることもあります。行員の着服事件は毎月のようにあり、2022年12月にも茨城にある銀行で5000万円近い預金を着服した事件が報道されました。金融資産的にはアッパーマス層に該当する顧客です。
こうしたことにならないよう、定期的に異動を行うのは理にかなってはいますが、長い期間、一緒にパートナーとして資産運用・資産管理を目指すという形にはなりえません。
プライベートバンクは長い付き合いになりやすい
対してプライベートバンクの場合は、定期的な異動がないので、退職などない限りは同じ人物とパートナーとして関係を持ち続け、二人三脚のような形で資産管理や資産運用が行えます。
基本的には1人の富裕層の顧客に対して、1人のプライベートバンカーが専属の形でつき、原則はこのまま関係が続きます。もちろん顧客側からチェンジを求められたり、プライベートバンカーがヘッドハンティングされたりすれば別ですが、お互いに信頼関係があるのであれば、長く付き合いが続くことになります。
LGT銀行が日本に進出する理由

LGT銀行が日本に進出する理由は、いくつか考えられますが、ここまで取り上げてきた日本のプライベートバンクのスタンスと大きく関係しています。
攻めて勝たずに守って負ける
LGT銀行をはじめとするプライベートバンクは、「攻めて勝つ」傾向にあり、積極的な投資が特徴的です。LGT銀行はいち早くESG投資を行い、社会的に有益なものに対して投資を行ってきました。攻めて勝つからこそ、資産運用をする際にも目減りさせずに着実に増やしていくことができます。
ところが、日本のプライベートバンクは絶対に損を出さないようにしようという立ち回りになりがちです。減らさない投資は確かに守りが堅いですが、一旦守りが崩れた時の脆さは相当です。守って負けるという形になりやすく、臨機応変な対応ができずに墓穴を掘ることも考えられます。
もちろん保守的な立ち回りが日本人に好まれますが、インフレが叫ばれる時代に少なくともインフレ率以上に結果を出せないとその分、資産は目減りしていきます。まだ日本はインフレ率が低いですが、これから一気に高まる可能性も否定できず、その時に守りを重視するのは、長い未来を考えると疑問を抱きたくなるのも無理はありません。
まんべんなく攻めて勝つ時代に目覚める日本人
富裕層に対する仕打ちのようなことが日本でも起きており、富裕層に対する徴税強化を行い、多くの庶民たちの憂さ晴らしをしようとしています。相続税などで多くとられるとなれば、もはや守っている場合ではなくなります。そろそろ投資に目覚め、まんべんなく投資を行って利益を出していくことに、少なからず日本人が気付き始めています。
当然ながらこの動きは多くのプライベートバンクは察知しており、あとはどのようにアプローチをしていくかにかかっていた中で、LGT銀行が満を持して参入した形です。
LGT銀行とはどのような銀行なのか

LGT銀行はリヒテンシュタインにある銀行ですが、具体的な中身、概要について解説します。
貴族の財産を守るLGT銀行
LGT銀行はリヒテンシュタイン侯爵家の資産を中心に扱っている銀行で、その歴史は1920年から始まっています。リヒテンシュタイン侯爵家はドイツをルーツとする貴族で、リヒテンシュタインの国土は小豆島ほどの大きさしかないものの、海外に有する土地は国土の何倍にもなり、この土地がリヒテンシュタイン侯爵家の源泉となっていました。
ドイツと関係があったためにドイツマルクで管理を行っていたところ、第一次世界大戦の影響でドイツマルクがハイパーインフレを起こし、LGT銀行が管理していた大量のドイツマルクは一気に紙切れに。このことが今日に至るLGT銀行の方針を決定づけることになります。
ちなみにリヒテンシュタインは第一次世界大戦に参加しておらず、あくまでも中立でしたが、オーストリアとの関係が深かったために連合国側から敵とみなされてしまい、その結果、大きな打撃を受けた形です。
1930年には、リヒテンシュタイン侯爵家がLGT銀行の実権を握ることで、リヒテンシュタインという国家を背負って立つプライベートバンクとして歩みを始めることになったのです。
ESG投資の先取り

LGT銀行は古くからESG投資の先取りのようなことを行ってきました。ESG投資は例えば女性が多く活躍する会社、地域活性化に力を入れる企業、労働環境を整備するベンチャーなど社会にとって有益な企業を中心に投資を行うことを指し、世界的な投資のトレンドになっています。
このESG投資は古くからあったわけではありませんが、LGT銀行では早くからこのスタンスで投資を行ってきました。その理由は、先ほどもご紹介した第一次世界大戦でのハイパーインフレです。戦争につながるような、良からぬことでもうけを出したとしてもハイパーインフレであっさりと破滅する、それならば世のため人のために頑張る企業をたくさん応援し、リスクヘッジを行った方がいいという考えです。
LGT銀行は投資先がかなり分散されていて、リスクヘッジがなされています。それは株や債券といったリスクヘッジではなく、時に美術品、時にプライベートエクイティといった形で分散されており、ミドルリターンを目指した運用が徹底されているのです。100年前の教訓がしっかりと受け継がれており、再三ご紹介してきた「古き良きプライベートバンク」と言えます。
LGT銀行のベースとなるリヒテンシュタイン

LGT銀行は小豆島とほとんど同じ面積のリヒテンシュタインにある銀行です。だからこそ、リヒテンシュタインが持つ固有のアイデンティティやこれまでの国の歴史がLGT銀行の成り立ちにも大きく関係しています。
第一次世界大戦の教訓を生かしたリヒテンシュタイン
オーストリアとの関係を解消し、スイスに切り替えたリヒテンシュタイン。スイスフランは現在も用いられるとともに、スイスに色々とお任せをするような国の運営になっていきます。しかし、第二次世界大戦が勃発し、再び中立の立場をとったリヒテンシュタイン。しかし、このころにはLGT銀行というプライベートバンクがあり、資産は厳重に管理されましたが、この時はまだ経済的に苦しく、芸術品を売らざるを得ない状況だったと言います。
金融センターとして機能するリヒテンシュタイン

そもそも日本人にとってリヒテンシュタインはお世辞にも知名度の高い国ではなく、どこにあるのかを地図で探してもらうにしても結構な時間がかかるかもしれません。何度もご紹介する通り、面積は小豆島とほとんど同じで人口は4万人、はっきり言って産業もそこまで発達していなかったリヒテンシュタインが経済的に苦しい時代が続いたのは無理もないでしょう。
しかし、リヒテンシュタインにとって最も強い武器となったのが法人税の低さ。法人税は12.5%と異様に低く、シンガポールと比べてもその低さは相当なものです。これだけ低ければ、おのずとリヒテンシュタインにオフィスを構える業者が海外から集まり、最終的にリヒテンシュタインの税収の4割を賄うまでになります。
あれだけ経済的に貧しかった国が一転して豊かになった背景にはそのようなことがありました。そしてこの流れを受けて、リヒテンシュタイン侯爵家の財産もどんどん増えていき、それにつれて、LGT銀行の規模も大きくなっていったのです。
LGT銀行が挑む日本のプライベートバンクの牙城

プライベートバンクの成り立ちやLGT銀行のスタンスなどをここまでご紹介してきましたが、多くの外資系が苦戦を強いられる状況がまだ続いています。
それだけ日本のプライベートバンクの牙城が揺るがないわけですが、どのような牙城となっているのか、日本のプライベートバンクの特徴をまとめました。
事業承継と相続の強さ
日本の場合、プライベートバンクでの相談事例で多く見受けられるのが事業承継と相続についてです。10億円以上の富裕層は3万人ほどといわれ、企業経営者と医師でそのうちの8割程度を占めています。そのため、いかに資産を増やすかよりも、いかに息子たちに事業承継をするか、もしくは相続を行うかに注目し、将来を不安視しています。
その不安を解消してもらえるよう、様々な策をアドバイスし、上手い解決策を練り出すのも日本のプライベートバンクの仕事です。この考え方は海外でもないわけではないものの、相続対策を中心にし、それが受け入れられている日本において、考え方的に決してメジャーとはいえない外資系が参入して苦戦するのはやむなしといったところでしょうか。
相続税捻出が肝に

事業承継を多くの企業経営者やお医者さんが考える中、相続税の捻出もかなり気にしている人が多く、いかに相続税を節税できるか、相続税の納税資金を用意できるかという考え方になっている人も珍しくありません。
相続税を円滑に支払うために生命保険への加入を提案する、1円でも相続税の支払いを少なくするために資産管理会社の立ち上げをアドバイスする、相続の際に家族同士でもめないために家族信託を行うなど、とにかく税務対策へのアドバイスが目立ちます。
外資系の場合、税務対策に関するアドバイスはあまりないとされ、その部分で外資系が苦戦を強いられる要素となっています。資産運用を目的にプライベートバンクを利用しているわけではないというのが現状で、1円でも多く子どもたちに資産を大きくしてから渡したいという考えは多数派にはなりえていません。
LGT銀行が日本で勝負し、勝機はあるのか

LGT銀行が参入して1年が経過し、着実に一歩一歩前進している一方で、LGT銀行に勝機はあるのか、そのあたりを気にする方も多いはずです。
「真のプライベートバンク」
LGTウェルスマネジメント信託株式会社において代表取締役会長を務め、記者会見や講演などを積極的にこなしている永倉義孝さんは、日本のプライベートバンクは顧客と金融機関の長い付き合いが行いにくい状況にあり、どちらかといえば株主に目が行きがちで、顧客ファーストにはなりにくいという見立てを示しています。
永倉義孝さん自身も外資系のプライベートバンクで働いており、短期的な利益を優先する姿勢に疑問を感じていました。日本でも真のプライベートバンクを作りたいという思いから、LGTなら真のプライベートバンクになる要素を満たし、活動できると判断し、日本部門のトップとなりました。日本にも真のプライベートバンクを作るという姿勢は勝機につながる可能性があります。
永倉義孝さんの輝かしい実績

永倉義孝さんはこれまで日本の銀行を始め、外資系の金融機関で仕事を続け、キャリアの多くをプライベートバンキングの仕事に費やしてきました。過去にも外資系のプライベートバンキングの新規参入を経験しており、クレディ・スイスで働いていた当時は営業成績が常にトップクラスだったとか。
前の職場でも十分な活躍を見せる中、やはり真のプライベートバンクを作りたいという気持ちは揺るぎませんでした。軸がブレないからこそ、今後に注目したくなります。
リヒテンシュタイン公子の言葉
LGT銀行が日本に参入した際、永倉義孝さんと一緒にメディアに出て受け答えをしているのが、リヒテンシュタインの公子であり、LGTの会長も務めるマックス・フォン・ウント・ツー・リヒテンシュタイン公子です。
マックスさんは東京に拠点を構えた際、自分たちのウェルスマネジメントを提供できることへの喜びを語っており、「長期的でサステナブルな投資やウェルスマネジメント」の提供を宣言しています。
長期的でサステナブルな投資とは何か

リヒテンシュタインの公子であるマックスさんが掲げる「長期的でサステナブルな投資」とは一体どのようなものなのか、探っていきます。
サステナブルは持続可能を意味する
近年SDGsが叫ばれ、具体的にやることがわかっていなくても、SDGsという言葉を知る人は多いかもしれません。このSDGsに大きく関係するのがサステナブルで、サステナブルは持続可能を意味します。つまり、長期的でサステナブルな投資は、持続可能な社会への投資を長期に渡って行うという意味です。
サステナブル投資の意識は日本と世界で明らかに異なっており、サステナブル投資をしていないと答えた投資家は全体の3分の1以上とされ、明らかにサステナブル投資に対する意識が低いことが挙げられます。
リターンに対する認識の違い
サステナブル投資を扱うファンドに対して魅力があるかどうかというアンケートがあります。そこでは高いリターンがありそうと答えたのは世界でかなり多く、反対にリターンが見込めないから魅力を感じないと答える日本人が圧倒的に多いという結果が出ています。
LGT銀行がサステナブル投資に積極的に乗り出す一方、なぜそこまでサステナブル投資に力を入れるほか、リターンはあるのかと説明を求めたがるのが日本人。リターンを求める日本人にとってサステナブル投資はあまり魅力的ではないと思われています。そこに対する興味関心や期待、不安をどのように表現し続け、説明を怠らないか、これがLGT銀行に求められます。
LGT銀行は運用という点で実績アリ!

サステナブル投資に自信を持つLGT銀行ですが、自信を持つのも当然なデータがあります。それは過去20年で元本割れを起こしていないこと。アメリカドルで計算を行った際、資産運用の実績で赤字になったことがないのです。金融危機が何度も襲い掛かり、その都度、世界では大変な状態になったと大騒ぎになりましたが、LGT銀行からすれば、そんなものはどこ吹く風。
厳密には5年単位でのリターンで元本割れがないということですが、それでもとても優秀な成績です。
投資先が世界中にあり、社会にとってプラスになるような投資先を見つけて投資していくスタイルでありながら、運用実績で順調に積み重ねてきたのだとすれば、サステナブル投資でリターンの根拠などを求める日本人もこれなら安心でしょう。
富裕層の資産管理を見直すべき理由

日本では格差是正など様々な理由から、富裕層に対する徴税強化を多くの国民が望んでいます。その声を受け、税金の仕組みを変えて富裕層からの徴税を強化するなど、富裕層を巡る状況は変わりつつあります。
富裕層の資産管理を見直すべき理由はいくつもあるので、ご紹介します。
事業拡大だけに力をいれてきた富裕層
これまでの富裕層は経営者が多かったこともあり、自社株の評価額で富裕層の扱いを受けていたケースが目立ちます。結局、金融資産を高めるには自社株の評価額を上げればよく、わざわざ資産運用をしなくても事業を頑張ればそれで問題なかったのです。
ゆえにプライベートバンクにそこまで力をいれる必要はなく、結果的にプライベートバンクを避けてきた人たちも少なくありません。富裕層たちの資産の多くは株や土地であり、プライベートバンクとは相いれない部分もあったと言えるでしょう。
縁を頼りすぎるケースも
日本でプライベートバンクがうまくいかないのは、真剣に資産運用を考え、資産管理を行っているケースが少ないからです。それでも富裕層がプライベートバンクを利用するのは、これまでの取引の関係性を保つためにあるので、自分たちの資産を大きくして次の時代につなげるといった意味合いは乏しいといえます。
プライベートバンクに対する現在の経営者たちのイメージはそこまでいいものではなく、保守的な感覚になりやすいです。しかしながら、経営者も代替わりなどがあり、新しいものを少しでも取り入れようという機運が段々と高まると富裕層の行動は変わる可能性があります。
日本で狙うべき富裕層は経営者以外に?

企業経営者にとって自分で作り上げた企業は我が子のようなものであり、それを自分の代で簡単につぶすとなればこんな悔しいことはありません。だからこそ、次の世代につなげようと必死になるのですが、LGT銀行をはじめとするプライベートバンクは、医師やタレントなど現金収入が多い富裕層をターゲットにする動きを見せています。
様々な投資への関心が強い
これまでの企業経営者の場合は、自社株さえ上がればそれでいいというマインドであり、自社に関することへの勉強は徹底しているものの、投資に関する勉強はあまりしていないために、プライベートバンクに関心を示していない可能性が高いです。
その点、医師やスポーツ選手、タレントなどは、運用して資産を増やすことに貪欲です。最近はやりのオルタナティブ投資を始め、日本人にはなじみの薄い投資に対する知識もあり、プライベートバンクの情報にも興味津々になりやすいでしょう。
高齢者たちの資産管理という路線

会社などを辞めたり、定年退職をしたりして、一定の貯金は築き上げたものの、収入自体はほとんどなくなった、いわゆる「リタイアメントリッチ」の人たちは資産を増やす理由がいくつかあります。いつ起きるかわからないインフレや度々発生する様々な費用、家族との旅行など、実入りは少ないものの、出ていくお金はある程度存在する場合、運用をしないとどうにもなりません。
こうしたケースを想定して既に仕事をしないで悠々自適に暮らし始める人は、計画性を持った資産運用・資産管理をしなくてはならず、LGT銀行などのプライベートバンクはまさに適任です。
LGT銀行が狙う顧客とは

LGT銀行は金融資産が10億円以上というのを1つの目安にしています。これはLGT銀行が展開するサービスに対して価値を感じやすいのが金融資産が10億円以上からではないかという思惑があるからです。
LGT銀行では当然のことながら日本の富裕層に関する分析を行っています。富裕層の中にも企業経営者のオーナーから不動産のオーナー、医療法人のオーナーなど色々な富裕層がいます。LGT銀行ではこれをさらに細分化し、株式上場を果たしているオーナーなのか、それとも株式を上場していないオーナーなのかに分けています。
そして、現在も経営者として活動しているのか、それともリタイアメントリッチなのか、そこまでをも分けることで、LGT銀行が想定する顧客のターゲットがおのずと決まってくるのです。LGT銀行では資産承継や事業承継など日本のプライベートバンクが力を入れてきたことにもしっかりと対応をするなど、日本で成功するためにやるべきことをやろうとしています。
LGT銀行の強みとは

LGT銀行の強みは長年リヒテンシュタイン侯爵家の財産を守り続け、多くの富裕層のサポートを行ってきたという実績にあります。LGT銀行では富裕層の資産を守るべく、プライベートバンクとしてできることを提示し、資産管理会社のような仕組みを作り上げて、財産を守るという形を作り上げてきました。
日本のプライベートバンクだとなかなか踏み込んだことはできず、表面的なお付き合いになることもある中、LGT銀行は一歩踏み込んでアドバイスを送っていき、的確な指示を出していくので資産を守っていきたい富裕層にとってみれば渡りに船のような状況です。
リヒテンシュタイン侯爵家と同じ方針で運用をしてもらえる
LGT銀行の特徴は、リヒテンシュタイン侯爵家と同じ運用方針で資産運用を行ってもらえる点にあります。LGT銀行は長年、リヒテンシュタイン侯爵家と関係性があり、リヒテンシュタイン侯爵家の財産を守り続ける存在です。
このリヒテンシュタイン侯爵家と同じ方針で運用を行うということは、長い目で見て安定的な運用を行ってくれることを意味しており、大事な資産を安心して委ねることができます。そもそもLGT銀行の成り立ちや変遷を見る限り、リヒテンシュタイン侯爵家のプライベートバンクであることは明らかです。
そして、プライベートバンクは富裕層が自分たちの資産を守るために存在しており、お仲間の人たちの試算も一緒に守るということをやっていく中で成り立っていった経緯があります。同じように運用を行うのは当然であり、いわば一蓮托生のようなもので、利益相反は起こりえないのです。
目先の利益を追わないLGT銀行

LGT銀行のいいところは、目先の利益を追わないところです。アドバイスを出すことで手数料がもらえたり、預けている資産に手数料がかかったりすることがあり、これがプライベートバンクの利益になります。ここの部分で利益を追いかけることはいくらでもできますが、それはリヒテンシュタイン侯爵家の総意ではありません。
LGT銀行が大切にしていることは、リヒテンシュタイン侯爵家が今まで大切にしてきた運用に関するルールを守りつつ、長い目で見た運用を行っていくことです。その際、リヒテンシュタイン侯爵家の名前が前面に出るわけですから、恥をかかせるような行為はできないのです。
LGT銀行が大切にするインパクト投資

LGT銀行ではサステナブル投資に力を入れています。サステナブル投資の場合、時に大きなリターンと社会貢献が共存するからです。こうした大きなリターンと社会貢献が共存するような投資を、「インパクト投資」と言います。
インパクト投資の可能性
インパクト投資は世界が抱える社会的な問題や日本も無関係とはいえない環境に関する問題などを解決できる投資を指し、大きなリターンと社会貢献を共存させていく投資でもあります。社会問題などは根深い問題だからこそ解決までに時間がかかります。そして、時間以上にお金もかかるため、インパクト投資で解決を目指せるというわけです。
しかしながら、日本ではまだインパクト投資は知られておらず、特に日本だと社会貢献とリターンは共存するものなのかという素朴な疑問がぬぐい切れていません。ゆえに可能性を過小評価する人が少なくありませんが、実際のところは十分可能性があり、日本人がこの可能性に気付き始めると、LGT銀行に対する期待は高まっていくはずです。
LGT銀行が行ったインパクト投資の実例

LGT銀行が行った実際のインパクト投資をご紹介します。二酸化炭素の排出権の売買ではスイスにある会社と契約を結び、その会社がLGTに成り代わって、二酸化炭素を削減していくというものです。削減してもらう代わりにお金を払うことになっています。その量は10年間でなんと9,000トン。相当な二酸化炭素を削減していくことになります。
二酸化炭素の排出は重大な問題

二酸化炭素は温室効果ガスとして知られ、ここ数年温暖化の影響は顕著になっています。2015年にはパリ競艇が制定され、温暖化を抑え込んでいくことを目標にしていますが、その目標達成のためには排出量を減らさないといけません。LGT銀行はこの動きを投資で解決しようと考え、二酸化炭素をお金を出して買い取ってもらうことにしたのです。
LGTの会長の考え
リヒテンシュタイン侯爵家の公子であるマックス・フォン・ウント・ツーさんは、カーボン・フットプリンターの大きな改善が必要であると考えています。カーボン・フットプリンターとは、商品の加工や生産などそれぞれの工程に温室効果ガスが発生しており、その様子を数値で「見える化」することで、より二酸化炭素を出さない世界を目指せます。
二酸化炭素をいかに減らすかは大変ですが、LGT銀行と契約を結んだ会社では、まず正攻法に森林を再生していく方法で二酸化炭素を減らすことを心がけています。もちろん、技術革新が二酸化炭素の減少につながることもあります。
LGT銀行は年々成長を遂げている

LGT銀行はリヒテンシュタイン侯爵家と共に成長を遂げるプライベートバンクですが、この方針がとても正しいことを照明するかのように毎年増益などを繰り返しています。2022年上半期の記録によるとLGTグループの利益は全体で2億2,000万スイスフラン程度を確保し、日本円にするとおよそ250億円程度の利益となっています。
また運用資産残高も2847億スイスフランとなっており、30兆円以上の運用資産残高があることがわかります。毎年のように資産がどんどん入ってくるほか、ウェルスマネジメントの会社の買収を行うなど年々規模を拡大させています。
インフレの影響で金利が上昇している状況にあり、LGTの純金利収入は1億4000万スイスフラン近くあるので、200億円に迫る純金利収入です。運用資産残高が30兆円以上あることを考えると確かに相当なものですが、これらは富裕層の顧客から大切に預かった財産であり、それが新たな利益を生み出しているのです。
LGTが掘り起こしたいタンス預金や普通預金

日本は富裕層が結構多くいる国ですが、せっかくの現金もうまく活用せず、普通預金に預けたままになっている人もいれば、タンス預金として家に保管している人も多く、何かとリスクが伴い、メリットがありません。そのため、これらを投資に回してほしいと考えているのがLGT銀行です。
タンス預金の額がハンパない

現時点で日本の家庭にあるタンス預金はおよそ50兆円程度と言われ、ここ最近のコロナ禍でその額面は一気に増えたといわれています。そもそも現金や預金を重視する国とされ、日本の個人の金融資産が1800兆円と言われる中で、日本はなんと1000兆円が現金や預金となっており、ほとんど投資に回されていません。
この部分のお金がいくらかでもLGT銀行に回れば、大成功といっても過言ではなく、LGT銀行を急成長させる要因がそこにあります。そして、ここ20年でゼロ金利政策が採用され、最近になって利上げこそしたものの、普通預金の利息だけではどうにもなりません。雀の涙という表現があまりにもぴったりです。
タンス預金でハイパーインフレが起きればリヒテンシュタイン侯爵家と同じ流れ
リヒテンシュタイン侯爵家はドイツマルクがハイパーインフレを起こしたことでリヒテンシュタイン侯爵家が介入する前のLGT銀行の財産は紙切れになってしまいました。もしも日本でハイパーインフレが起きたと仮定した場合、タンス預金はいっぺんに紙切れとなってしまうのです。
リヒテンシュタイン侯爵家ではもう二度と紙切れになってしまうような展開を避けていこうと考え、今の運用方式になっており、タンス預金でせっかくのお金をみすみす溶かしてしまうのはあまりいいことではありません。
インフレが様々な悪影響をもたらす

インフレは早い話が現金としての価値を落とすものであることは、ハイパーインフレで資産が紙切れになってしまったリヒテンシュタイン侯爵家のケースからも明らかであり、だからこそリヒテンシュタイン侯爵家のプライベートバンクであるLGT銀行は、インフレにも対応するためにありとあらゆる投資先を見つけて対処しているのです。
タンス預金をしている富裕層たちにとって、インフレは最悪の事態です。せっかく稼いできたお金に価値がなくなれば、極端な話、ハイパーインフレで無一文になる可能性だってあるからです。10億円は1ドル100円で単純に考えれば1000万ドルですが、これは1ドルを100円として交換してくれる前提によるもので、もしもインフレなど様々な影響で1ドル1000円になったとすれば、100万ドルにしかなりません。
ハイパーインフレになれば国内の通貨は意味をなさなくなり、ドルでのやり取りが一般的になってしまいます。これは円で資産を持ち続ける問題にもつながりますが、大事なことはいかにインフレ対策をするかです。
過去の失敗があるからこそのLGT銀行
LGT銀行は第一次世界大戦の煽りを受けてハイパーインフレに直面してしまったことで、多くの資産を失ってしまいました。そして、リヒテンシュタインが第二次世界大戦でも保有していた海外の土地を不当に奪われるなどの憂き目に遭い、貧しい時代を過ごした背景があります。
そこから立ち直り、たくましくプライベートバンクを存続し続けるのは、ハイパーインフレにも対応した強固で柔軟なポートフォリオのおかげといっても過言ではありません。LGT銀行はリヒテンシュタイン侯爵家と同じ方針で資産運用を行うわけですから、ハイパーインフレにも耐えうる運用を行うことは間違いありません。
過去の失敗を乗り越え、着実に成長し続けるLGT銀行。タンス預金は何1つメリットがなく、何かとデメリットがある手法です。日本でもインフレ時代に突入していく時代において、LGT銀行などのプライベートバンクを積極的に用いていくことが求められます。
まとめ

LGT銀行からしても外資系の会社が多数参入するプライベートバンクがうまくいかない状況は百も承知であり、だからこそ長い目での運用と短期間での利益を求めない方針を貫いていることはとてもクレバーな方法です。
あとはいかに日本において、本当のプライベートバンクの文化を作り上げていくかにかかっています。追い風も吹いており、富裕層への徴税強化で資産を守らないといけないという危機感が、富裕層に出始めており、これを活かせるかどうかにかかっています。
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